|
大阪府立産業開発研究所では、コミュニティ・ビジネスの啓発・振興を通じ、豊かな地域社会の形成と地域産業の活性化を図ることを目的として、平成13年度にコミュニティ・ビジネス・モデリング事業を実施しました。この事業は、コミュニティ・ビジネスのモデルを探ろうとする調査研究事業、啓発・普及のためのシンポジウムの開催、それに事業結果をまとめた手引書(「コミュニティ・ビジネスへの道しるべ」)作成の3つの内容から構成されていました。本稿はこれらのうち、この事業の中核である調査研究事業の結果について、その概要を報告するものです。
大阪府立産業開発研究所
1.背景
コミュニティ・ビジネス・モデリング事業(以下「本事業」という。)を実施した背景には、大阪府立産業開発研究所(以下「当所」という。)の次のような問題意識がありました。
先ず、高齢社会の到来に関することです。わが国の高齢化のスピードは先進各国では他に類を見ない程に速く、総人口に占める65歳以上人口の割合が7%を超え14%以上になるまでに要した年数はわずか24年で、とりわけ大阪では20年という大変短い年数となっていました(注)。
高齢化の進展は地域社会に様々な変化をもたらすようになります。高齢化による変化は一様ではなく、個人あるいは地域によって実に多様なニーズや問題となって現れますので、類似の現象に対する他地域での対応が、その地域社会では通用しない可能性が高いという特徴があり、今後においては地域毎の課題解決に向けた対応が必要になるのではと考えたことです。
二つ目は大阪経済の成長率の低さです。1990年代の中期以降、わが国の経済は長期にわたり低迷を続けているのですが、なかでも大阪の実質経済成長率は、全国のそれに較べここ数年低い値を示しています。ちなみに、平成10年度における総生産の対前年度比では、大阪府が−3.0%であったのに対し、全国は−0.6%と大きな乖離が見られました。これは主に経済のグローバル化や産業構造の相違などによるものと説明されていますが、これらの進展に伴って完全失業率も上昇し雇用に対する問題がますます深刻となっていました。また、廃業率が開業率を上回り、事業所数が減少するという傾向も見られました。
これらのことは、大阪産業再生への取り組みの必要性が急務であることを示すとともに、それを実現するには、これまでにはない新たな視点を加えることを求めているのではと考えたことです。
そこで当所が注目したのがコミュニティ・ビジネスだったのです。
2.コミュニティ・ビジネスとは
コミュニティ・ビジネスというのは、企業(民間)や行政(公共)とは異なる活動主体として、その存在が注目されつつある社会・経済セクターの一つの形態を指すものですが、現時点でコミュニティ・ビジネスを明確に定義したものはありません。それを捉える人によってそれぞれ異なるといわれているのですが、ほぼ共通している特徴としては、次のようなものがあります。
(1) 地域を主な事業基盤としている。
(2) 地域が抱える課題や問題の解決、あるいはニーズの実現などを事業としている。
(3) 市民(住民)主体で地域に密着した活動を行っている。
(4) 使命や理念、あるいは目標を共有する人々が協働して活動している。
(5) 資源の地域内循環を支援・促進する活動が多い。
(6) 比較的営利性の低い事業が多い。
コミュニティ・ビジネスは、このように社会性の強い活動をビジネス化しているという特徴を有した存在で、これからの高齢社会において、市民(住民)社会の生活の質的充実を実現し、住みよく暮らしよい地域づくりを支える重要な役割を果たすとともに、その成長・発展が経済の活性化と雇用創出という効果を生むであろうと期待されるものです。
コミュニティ・ビジネスの具体的な動きはまだまだ少ないのが現状ですが、高齢化の進展に伴い、地域社会にさまざまな形で定着していくものと思われます。
3.事業実施手順
本事業を実施するには、何らかの市民活動を既に行っている、あるいはコミュニティ・ビジネスを行おうとする構想や意思を持っている団体やグループの協力を得る必要がありました。
そこで、コミュニティ・ビジネスの事業主体の多くは、NPOなどの市民団体、自営業者、企業などで地域との結びつきが強いこと、それに事業内容の特性から府内の市町村と連携を図りながら事業を進める必要があったことなどから、先ず市町村の商工担当セクションに対しコミュニティ・ビジネスに関するアンケート調査を実施し、そのなかで先述のような団体やグループの存在の認知と本事業の実施対象として適当と考えられる団体やグループについて質問をしました。
この結果、「市町村としても本事業に関心があり、かつ具体的な団体が存在している。」との回答が得られた、豊中市の「豊中駅前まちづくり協議会の『環境部会』」、及び守口市の「橋波商店連合会『やる気会』」の2つの組織を実施対象とすることになりました。
本事業を具体的に進めるに当たっては、2つの対象組織毎に学識経験者を委員長とする調査研究委員会〔委員会は委員長の他、コンサルタント(中小企業診断士)、実行者(対象団体の構成員)、事務局委員などで構成〕を設置し、委員会活動を通じて、それぞれの組織における活動のあり方やコミュニティ・ビジネスのモデリングについて様々な観点から検討を行いました。また、委員会では、色々な専門性を有した人の考えや意見、それにノウハウを取り入れて議論を深めるとの観点から、核となるメンバーは固定しましたが、必要に応じそれぞれの分野の専門家などに委員会への参加を求めました。
4.結果の概要
豊中駅前まちづくり協議会「環境部会」と橋波商店連合会「やる気会」の両者の取り組みについては、次節以降で報告しますが、ここでは委員会活動で、コミュニティ・ビジネスを行おうとする際にそれをいかに実現させるかが重要であるとされた主要なキーワードについてごく簡単に紹介し、結果の概要にしたいと思います。
先ず、「使命」や「理念」、あるいは「目的」という活動には不可欠な要素の存在です。コミュニティ・ビジネスはこれらを共有した人々が行う社会性を有した経済活動ですので、活動を通じてそれらが実現されなくては参加者の共感が得られなくなります。このような意味では、組織活動におけるビジョンの共有と確認は常に行っておくことが大切となります。
次に、コミュニティ・ビジネスは「協働(コラボレーション)」により成り立つものであることから、これが成立する要件が活動に存在していることが必要となります。これは先述の使命や目的の共有と密接に関係しており、多くの参加者は自立した市民であり、組織におけるそれらの活動は協働であることの認識を持つことの大切さを示すものです。更に、コミュニティ・ビジネスは、自己の組織単独での活動には限界があり、使命や理念を共有できる他の団体などとの協働も必要になる場合が多いことから、常日頃から外部の団体などとの関係を構築しておくことも大切となります。
以上、紙面の都合上、十分な報告が出来ませんが、コミュニティ・ビジネスが市民団体やNPO、それに企業などにより起業され、産業の活性化につながることを期待しています。
(注)国連では、65歳以上人口が全体の7%を超えると「高齢化社会」と定義し、14%を超えると「高齢社会」とします。
▲ページトップへ
■「コミュニティ・ビジネスへの道しるべ」は、大阪府府政情報センターにおいて閲覧することができます。
場所:大阪市中央区大手通1-2-12 NBF谷町ビル3階
電話06-6941-0351(内線5045)
利用時間:午前9時から午後5時30分まで(土曜日、日曜日、祝日を除く)
■お問い合わせ先:大阪府立産業開発研究所
電話06-6947-4361 ファクス06-6947-4364
|