■第二回(「おおさかCBネット・NEWS LETTER」第2号より)
 |
 |
|
プロフィール:(はやせ・のぼる)大阪ボランティア協会 理事・事務局長 1955年、大阪府生まれ。
多様な市民活動が展開される社会の創造にむけて、ボランティア活動、市民活動の推進に奔走。熱烈な阪神タイガースファンでもある。今回、平成15年度大阪府CB起業家応援事業・先導的CB選考副委員長を務める。
|
日本シリーズで我が阪神タイガースを下し、まさに絶頂期にあった福岡ダイエーホークスが、チームリーダーの小久保選手無償移籍事件で大荒れだ。王監督も含む同僚選手やファンが猛反発。球団経営陣との間に深刻な対立が生まれている。親会社ダイエーの経営にも少なからぬ影響を与えそうだが、このような反発が広がる背景にはプロスポーツ経営というビジネスの特殊性が関係している。
元来、プロスポーツでは、ファンとチームの一体感をあおる様々な仕掛けがなされている。地域名を冠した球団名、「ホーム(我が家の)ゲーム」という呼称…。実際、こうした中でファンの意識はチームや選手と一体化していく。選手と同じユニホームを着て応援するファンの姿は、そのことを如実に示している。冷めた見方をすれば赤の他人がボールを投げたり打ったりしているだけとも言えるのだが、贔屓チームが勝つと大喜びし、負けると我がことのように落ち込んでしまう。ファンにとって贔屓チームを応援することは、単なるレジャーの域を越えて、自らの存在自体を鼓舞する行為でもあるのだ。
それなのに、突然、不透明な形で、自分の分身とも思っていた選手をチームに何の見返りももたらさずに他チームへ移籍させたのだから、ファンが反発するのも当然だ。
ところで、このファンという「仲間」が支えるビジネスという点では、コミュニティビジネスにも同様の要素があると思う。コミュニティビジネスでは、事業目的をコミュニティの課題解決とする点で社会性の高い取り組みだが、「ビジネス」という呼称が使われるように、事業推進の財源の大半は寄付金などに頼らず、事業自体から得られる収入でまかない、安定的・継続的に事業を進めようとする。もっとも、ここで「コミュニティの課題解決」へのこだわりが強ければ強いほど、一般の営利企業の事業に比べて手間がかかることになる。たとえば、介護サービスの提供とともに高齢者に住みよいまちづくりも視野に入れると、機関紙作りや啓発事業にも取り組むことになる。しかし、こうした事業にエネルギーをかければかけるほど、コストもかかる。そのため、価格だけで評価する消費者ばかりだと、事業は敬遠され、その取り組みは頓挫してしまう。
そこで必要になるのが、コミュニティビジネスに対する「ファン」の存在だ。
ファンという「仲間」によって支えられるビジネスは、なかなかにしぶとい。これは我が阪神タイガースを思えば、すぐに納得いただけるだろう。強いに越したことはないが、弱いと人気が落ちるわけでもない。一生懸命応援して、結局、無様に負けてしまっても、「人生の悲哀を感じさせる」などと理屈をこねて共に悲しむ。戦績の悪さという点での商品の質が悪くとも、別の「品質」があるのだ。
タイガースの場合、それは、球場での一体感(甲子園球場を「地上の楽園」と呼んだ人もいた)や同じファンとの仲間関係、財力にモノを言わせる読売ジャイアンツに対抗する立場などだろう。それと似たような関係を市民との間に築けるなら、その取り組みがコミュニティビジネスとして成功する可能性も開けてくる。そして、その関係作りの鍵は、市民の「共感」を得るということだ。一般のビジネスの基本は「交換」だが、コミュニティビジネスでは「商品」に「共感」が伴うことが大切だ。そこで、ミッションの明示、運営の透明化、消費者(市民)との関係作りなどが必要になる。しかも、これらはお題目ではなく、スタッフの働く姿勢などに具体的に反映していることが重要だ。
なお蛇足ではあるが、今年のタイガースの場合、ファンの共感を高める点で、星野仙一という人物の存在が決定的に重要な役割を果たしたことは言うまでもない。
|